猛毒のフグの卵巣から作られた、加賀の珍味「ふぐの子」を食べてみた!

7月の終わりに石川に帰省した時にお土産に買ってきた「ふぐの子」が冷蔵庫にあったのをスッカリ忘れていました(笑)

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「ふぐの子」とは石川県の郷土料理で、フグの卵巣の糠漬けです。

前回の帰省も含めてこれまで一度も食べたことがなかったのですが、これが「美味しい!」というのをテレビの旅番組かなにかで見て、一度食べてみようと思って買ってきたのでした。ただ、どんな味なのかわからないし、(お店でメモはもらったんですが)食べ方もよくわからないので放置してしまっていました。

ペロッ… これはテトロドトキシン!

フグと聞いてまず思い出すのは、なんといっても「テトロドトキシン(TTX)」ですよね。致死量はわずか1〜2mg、あの青酸カリの約850倍の毒性を誇る、超ヤバイ猛毒です。さらにフグの卵巣や肝臓なんて部位の中で特に毒性が強いことで有名です。フグだけでなく、ヒョウモンダコやスベスベマンジュウガニなどもテトロドトキシンを持っていたりします。とにかくとても危険な猛毒なんです。

「ふぐの子」はゴマフグの卵巣を使っています。「もしかしたら高級魚のトラフグと違って、毒がないフグだったりするんじゃね?」とか思ったんですが、そんな虫のいい話はなく、当然のようにゴマフグもテトロドトキシンを持っていて、卵巣や肝臓は特に強毒です。

しかも、テトロドトキシンは300℃の加熱でも分解されず、通常の調理程度では煮ようが焼こうが毒性を失うことはありません(フグを調理するには各都道府県ごとのフグ取扱者の資格が必要です)。しかもまだ解毒方法が見つかっていないそうで、もし致死量のテトロドトキシンを摂取してしまった場合、20分〜数時間で神経麻痺の症状が現れ、24時間以内に死亡してしまうことが多いのだそうです。

ダメじゃん。食べれないじゃん。何でそんな危ないもの売ってるの。

 

でも、毒素は抜けているんです。そう、ふぐの子ならね。

ふぐの子は石川県の加賀地方、白山市(旧・美川町)の伝統的な珍味です。美川というと北陸自動車道から見えた「美川県一の町」の看板?塔?で有名でしたね(全然有名じゃないと思う) 合併して白山市になって美川町はなくなってしまいましたし、例の看板も今は撤去されてしまったそうですが(参考:@nifty:デイリーポータルZ:美川ケンイチの町

その美川で伝統的に作られている「ふぐの子」ですが、実は、なぜ毒性がなくなるのかまだ科学的に解明されていないということなんだそうです。ビックリです(笑)

ふぐの子の作り方を調べてみましたが、基本的には卵巣を1〜1年半ほど塩漬けにして、その後、糠や麹などとともにまた半年〜1年程度、今度は糠漬けにするだけなんだそうです。 糠漬けから採集された最近からはテトロドトキシンを分解できるものが見つからなかったそうで、塩や糠で漬けることによる微生物の働きではないようです。

とにかく、なぜかよくわからないけど毒素が抜けている、ということなのでした(笑)

上の写真にも少し見えていますが、毒性検査をして、石川県ふぐ加工協会の「検査済之証」シールが貼られていなければダメです。もしシールが貼っていないふぐの子が安く売っていたとしても、死にたくなかったら絶対に買っちゃダメです。ちなみに、フグの卵巣の糠漬け・粕漬けなどは、石川県でしか製造・販売が許可されていないので、いくらフグ処理の資格を持っていたとしても、勝手に作っちゃダメみたいですよ。

 

とにかく食べてみよう。

中身を取り出すとこんな感じ。ぬかというよりは、チーズのような匂いがします。

 

切ってみるとこんな感じ。明太子みたいな感じですね。魚の卵巣から作られているのであたりまえですが。

 

白米の上にほぐしたふぐの子を乗せてみました。検査済とはいえ、ホントに毒入ってないんだろうか…

「君がこのブログを読んでいる頃、僕はもうこの世にいないと思う…」みたいなこと書いとかなくて大丈夫だろうか…

でもまあ、生命保険も入ってるしきっと大丈夫(?)、意を決して食べてみます…

 

………うまい!

 

明太子のような、チーズのような、プチプチという食感。ちょっとクセがあり好みは別れるかもしれませんが、塩っ気が強く、これだけでご飯何杯でもいけちゃいそうな感じです。

ビールや日本酒の肴にかなりよさげです。

 

ふぐの子ご飯を食べてから一晩たっても大丈夫だったので(笑) 他にもふぐの子入れて食べてみました。基本的に粒の大きさがたらこと同じくらいなので、明太子の代わりにふぐの子投入という使い方で良さそうです。

ふぐの子茶漬け! 明太茶漬けみたいな感じではありますが、また違った独特の風味があります。

 

ふぐのこパスタ! オリーブオイルと和えたものです。これも明太パスタのような感じですが、味は別物ですね。

 

ちなみに、もらったメモです。 

薄くスライスして、アルミホイルで包んで軽くあぶると食感が変わって水分が飛ぶことで塩辛さが多少増しました。食感も焼きタラコみたいな感じになりますね。

 

そもそも昔の人はなんでフグ食べようと思ったのか

それにしてもふぐの子って、普通に考えたら存在しているのがあり得ないモノですよね。そもそもフグ刺しとかでさえ食べれるのが奇跡だと思うのに。

フグ自体は縄文時代の貝塚遺跡でフグの骨が発掘されたりするくらいで、その頃くらいからすでにフグは食べられていたようです。でも、最初にフグの内臓食べた人はすぐに中毒死したはずだし、周りの人もそれ見てたはずなのに「また食べようぜ」ってなる思考が理解不能ですよね(苦笑) 内臓食べなければ大丈夫ってわかっても、かなり勇気いりそうですし。

ドラえもんで、空き地の隣に住んでいる神成さんの庭にボール飛ばしてしまい、自慢の盆栽を破壊してしまうじゃないですか。神成さんにこっぴどく叱られたのに、またジャイアンたちが懲りずに空き地に野球やるのと同じような感じでしょうか(?) まあ、空き地側にネット張るとか対策しない神成さんも神成さんだと思いますけど。

そもそもフグの肉食えるのがわかったのも偶然だと思うんですよね。たとえば罪人を処刑しようとして「これ食え(そして死ね)」ってフグ食わせたら「これうまいっす!悪いことしたのにこんなうまいもの食わせてくれるなんて!」「えっ…」みたいな感じだったのかなあとか。

安土桃山時代、豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の際、下関駐留中にフグ中毒で死ぬ家来が多く出たため秀吉は「河豚食禁止令」を発布しました。その後も基本的に江戸時代の間は武士がフグを食べただけで家禄没収もあるほど厳禁だったようです。庶民は対象外だったようで食文化として発達し、今に至ります。小林一茶も

河豚食わぬ奴には見せな不二の山

という俳句を残しています。「フグを食べる勇気もないヤツには富士山を見る資格はない」ということだそうです。もし庶民も対象にして完全に禁止されていたら、日本のフグ食は消滅していたのかもしれませんね。

ちなみに明治時代に日清講和条約(下関条約)を締結する際に使った旅館(春帆樓)でシケで新鮮な魚が仕入れられなかったため、仕方なく出されたふぐ料理を、伊藤博文があまりの美味しさに感激して解禁することになったのだそうです。歴史の影にふぐ料理あり、ですね。

 

無毒なフグ肉でさえそんな紆余曲折があったのに(?)、猛毒がある卵巣なんて、なんで北陸の人は食べようとか思ったんでしょうね… そもそもふぐの子は冬のための保存食だったようですし、普通は捨ててしまうようなものでも何とかして食べれないか研究したんでしょうか。でもフグの卵巣だしなあ…

いったい何人の犠牲の上に成立した製法なのか、考えただけでゾッとします。「お前は今まで食べさせたフグの卵巣の数を覚えているのか?」って問い質したい感じです(誰に?)

そんなわけで「ふぐの子の製法」は、僕の中では「こんにゃくの製法」(灰とか入れるところが意味不明)を軽く超えましたね。受賞理由は「猛毒だってわかってるのに食おうとした思考回路が意味不明」です。オーパーツ的な感じすらします。

 

ごちそうさま!

とにかくフグの卵巣ということで、食べる時にちょっとドキドキしましたが、食べてみたらメチャクチャおいしかったです。酒の肴にいいし、いろいろ使えるし。でも、白米に乗っけて食べるのが一番美味しいかなあ。自分的に 珍味・オブ・ザ・イヤー2012 にノミネートしたいと思います(他にあるの?)

これは帰省のたびにまた買ってこないと。というか常備したいくらいですね。お店によって味も違うだろうし、いろいろ取り寄せてみようかな。

 

ふぐの子 ふぐの子ぬか漬

任孫商店

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